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3×9で武尊に行った頃からぼちぼち限界を感じていた)


ライドアンドハイクと個人的に呼んでいる、自転車で登山口まで走って山へ登る遊び。

それには主にクロスバイクを使っている。

最初は「登山口に何時間も放置しておく事になるからロードはちょっと嫌だな」くらいの気持ちでクロスバイクを選択していたが、何十回と繰り返している内にむしろしっくりくるようになった。

荒れた山奥の道を走るのには太めのタイヤを履かせたいし、登山用に荷物を積んで場合に寄っては2L満タンにしたウォーターキャリーも積載しなきゃいけないこの遊びには、やはりロードバイクは向かない。

ロードに比べて重量感のあるベース車だが、それも荒っぽい使い方をする上での頑丈さと考えられる。

3×9のギア構成でインナーローでは0.81というギアレシオには、20kg近い車重で10%超の林道を登らなきゃいけないようなシーンで随分助けられた。






1×10化を考えた理由

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(1×10化後)


結論から言ってしまうと、それでも「なんだかんだトータルで1×10にしてみてよかったな」と思っているんだけども、これも万人に当てはまるわけではなく。

ましてや、フロント3段なんて時代遅れ、ワンバイは完全なる上位互換、とか絶賛したいわけでは決してないのでその辺を掘り下げていきたい。


さてその3×9というギア構成、この幅の広さは「どんなシチュエーションでも対応できる」という強みがあるものの、不満がないわけではなかった。

まずトリプルフロントのメンテナンスのしにくさ、とにかくクランク周りの掃除は本当に面倒だった。

そしてディレイラー調整のシビアさ、フロント3段とリア9段が満遍なく気持ちよく変速が決まるようにセッティングするなんていうのは至難の業で。

ワイヤーを張り直した時も憂鬱だが、それ以上に出先でトラブルが起こった場合にはどっちからどう手を付けていいものかさっぱりわからないので、その時々でイン側かアウト側を捨ててとりあえず走れるようにしてから、帰宅後に改めてきちんと調整するような事もあった。

そして、これがきっかけとしては一番大きいが、27段とか言っててもギアレシオで見るとかぶり倒しているので、実質は13段くらいが有効な幅なんである、半分だ。


重い荷物で一日中走ったり登ったりの長丁場、少しでも無駄を省けるようにとこっちは試行錯誤しているのにこんな無駄の多いトラブルメーカーを抱えていていいのか。

そんなんで今後よりハードになっていく山々をハントし尽くせるのか、なんか思い切ったテコ入れいなきゃいけないんじゃないのか。

という考えが強くなり、悩んだ末に決断したのが1×10化だったわけで。

この辺の非効率性・不合理性みたいなものを明確に「どうにかしたい」という原動力でもって踏み切ったカスタマイズであり、それだとしても悩ましくもバッサリ切り捨てた部分もあった。

そこいらの詳しい事情を、続いて新パーツ構成と併せて説明していく。



1×10化に必要な物

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(MTB系のRDは可動部が多くてメカメカしい)


単純にフロントだけワンバイ化して1×9というのが最も手軽に済むんだが、それだと激坂用のロー側に合わせたギア構成にした時、トップが圧倒的に足りなくなる。

9Sカセットにそこまでローが大きい物はなかなかないし、そんなカセットに対応できるRDもなかなかない。

逆に思い切って1×11まで行こうと思うとリアハブの交換まで必要になってくるし、そこまで大掛かりにする気もない。

リア10Sなら9Sフリーにスペーサー噛ませてそのままいけそうだったので10Sに落ち着いた。

ここらへんの互換性事情は各々で違ってくると思うので、各々で要確認という事で。


あと素人がいじるリスクを考えても変速系はなるべく安全安心のシマノ様で構成していきたい、という事で。


RDは1×10にも対応している[シマノ DEORE RD-M5120-SGS]



1×10ならロー側は最大46Tというクソデカ歯数まで受け止めてくれるので安心。

カセットは[CS-M4100-10 11-42T]を選択した。




クランク&チェーンリングはアリエクで適当なやつ


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FDはいらないとして、ここをがっつりコストカットに当てる事にした。

最終的にチェーンリングを36Tとしたが、その近辺で「それなり」のクランクにしようと思うとBBの脱スクエアテーパーまで必要になってくる。

お高いクランクに専用工具まで加えると、うーん、予算。

ワンバイ化するわけだし、フロント周りの換装は後からでもやる気になれば手が付けやすいだろうから、今回は中華でお茶を濁す。

とりあえず使用に問題なさそうなクランクとナローワイド36Tを手配。



ロー側0.86と十分なヘタレ具合をキープしつつも、トップ側3.27とこれでも正直ちょっと物足りなくはある。

下りでは回してもスッカスカである。

が、まあ自分のライドアンドハイクスタイルで下り激踏みするようなシーンがあるのかというと、まあないわな。

それよりも上りでのマージンが自分の使い方においては重要なので、トップ側の欲は切り捨てることにした。


これでギア構成が決まり、後はそれを成立させるために必要なあれこれ。


シフター[DEORE SL-M4100]


元のシフターがブレーキレバー一体型だったのでそっちも変えなきゃならん。



Vブレーキ[DERORE BR-T610]



今回より以前に換装していたのでそのまま生かす。



ブレーキレバー[ALIVIO BL-T4000]



DEOREで揃えてもよかったんだが、左右セットがお安かったのと、後述するがとある理由でALIVIOグレードでよしとした。



あと時系列的に前後するが、これは実際に換装してみないと判断できなかったので後から買い足した分として、BBも変更。

まず間違いなくチェーンラインが狂ってくるだろうなとは思っていたが、付けてみないとどれくらいの差になるのかがわからなかった。


BB(スクエア)[BB-UN300]



シマノ68mmJISカートリッジBBの規格では、元のBBは「D-NL(122.5)」というやつになり右テーパー長は28mmとなる(らしい)。

これにトリプルクランクが付いて、チェーンラインは調べた結果と実測どちらでも検証してみて50mmとなっていた。

トリプルの場合のチェーンラインは、BBシェルの真ん中からミドルのチェーンリングまでの長さとなるが、ここにそのままシングルのクランクを取り付けた時の差分をどうにかしなきゃいけない。

いけないんだけども、そんなのクランクとチェーンリングの組み合わせ次第で、とにかく付けてみてから何mmズレているか測ってみるしかないんである。

実にめんどい出たとこ勝負ではあるが、「MM110(111.0)」右テーパー長20.5mmという規格でだいたい吸収できそうな差分だったので追加購入。


ちなみに厳密には1mm~2mm程度合っていないんだと思うが、その程度は「もうよし」とするしかない。

それが嫌なら全部綺麗にグレードを揃えたコンポーネントセットを導入するのが吉。



さて、主要なパーツはこれで決まりだが、手配する段階になって驚いた。

とにかく何もかもがない、どこを探しても在庫がない。

どうやらコロナ禍に端を発した自転車ブームに部品共有の遅れが合わさって、業界の品薄はけっこう深刻であるらしかった。

注文をかけたのが10月後半だったが、特にディレイラー、シフター、スプロケ辺りが揃うのは翌年の3月頃になるだろうと言われた。

ブレーキレバーをALIVIOにしたのも、それならとりあえず間違いなく確保できるからである。


目的がワンバイ化なので、どれか1つ欠けたら他のパーツも無用の長物となってしまう。

特に急ぐカスタムでもないので3月まで待っていいが、全部揃わないなら必要なくなってしまう旨をショップに伝え、双方了承の上で予約としてもらった。



組付け~その後の使用感

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(片道50km1000mUPのライドアンドハイクも順調にこなせた)


実際にパーツが全て揃って受け取ったのが2月末、組付けに取り掛かったのが3月だったので思い立ってから半年近くかかってしまった。

その間に各種ケーブル、チェーンなども一通り揃えておいて、チェーンラインに関して勉強してみたりトリプル→ワンバイ化した方のブログを読み漁って予習予習。

作業自体に(不器用さで大変、以外には)特に引っ掛かりはなく、ケーブル類もブレーキもディレイラーもBBもこれまでに一通り付け外しした事があったので問題なかった。

というか一通り付け外しした事があったので、構想段階からまあどうにかなるんじゃないかなと判断できたわけで。


初めてMTB系のディレイラーを触ったので勝手が違って手間取った部分もあったが、シマノの提供しているディーラーマニュアルを参照すればどうにかなる。

逆にディーラーマニュアルを読んで意味がわからなかったら自分にはハードルが高いと考えたろうから、この辺も判断材料になると思う。


あとクランクボルト。

クランクを中華で間に合わせたのもあってそれほど重要視していなかったが、最初適当な汎用品を使っていたら50kmくらい実走したところで緩んできて大変だった、あわてて出先のコメリで工具を買って帰ってきた。

その後も硬く締め付けたり、ロックタイトを塗ったりしてみたんだが、やはり4~50km走ってから見てみると緩んでいる。


常に8mmアレンキーを持ち歩くなんて冗談じゃないぞ、と思ったが、シマノの純正クランクボルトに変えてみたら全く緩まなくなった。



締め付けている時からネジ山が噛み合う「ガッチリ」感が違うのがわかる、見比べても全然違いがわからんが、全然違うのである。


ようやく安心して乗れるようになったのでライドアンドハイクにも使ってみた。


正直、FD・クランク分の重量減はほとんどわからないレベル。

たぶんそれを相殺する勢いで11-42Tのカセットが重いせいだろう、取り付けたリアホイールを持ってちょいビビった。

カセットだけで500g超あるので納得の重量感、もともと重くて頑丈さだけが取り柄のホイールと合わせたら鉄下駄も真っ青である。


ギア構成についてはほぼ想定していた通り。

ロー側のヘタレ具合は十分だし、トップはやはり下り基調でスピードが乗ってくると物足りないが平坦を走る分には事足りているくらい。

下りで重心を安定させるためにある程度回していたい、という感覚は残るがまあ仕方ない、ここんとこは折り込み済で切り捨てた部分である。


11-42Tの歯数構成は[11-13-15-18-21-24-28-32-37-42]といった具合で、特に後半は4Tもしくは5T一気に飛ぶ感じになる。

ワイドスプロケの宿命ではあるが、むしろ登山装備を積載した重量感のある車体ではこれくらいでいいんじゃないかと。

以前から上りが辛くなってきて1段落としても効果が薄く、結局2段まとめて落とすようなシーンが多々あった。

実走してみて、やはりこれくらいガツンとペダルが軽くなってくれた方が自分みたいのにとってはいいなと感じた。


そしてフロントの変速を全く考えなくていい、というのは予想以上にストレスが少なかった。

これが恩恵としては一番大きいかもしれない。

全て右手のシフトを重くするか軽くするかだけで完結するシンプルさはちょっと癖になる楽さ。

構成しているギアを全て満遍なく使っている、という実感もちょっとした快感である。

アウターローみたいな死にギアがないのは心地いい。


懸念していた、FDを無くした事によるチェーンの脱落は今のところ一度も起こっていない。

ナローワイドのチェーンリングは思っている以上に効果があるのだろう。

ガッツリ噛み合って遊びの少ない分回している時の摩擦音は以前より大きいが、走行にストレスを感じるほどではないので「こんなもんか」と考えている。


というわけで、切り捨てた部分、泣いた部分がないわけではないが、トータル納得のいくカスタムにはなった。

上りのためのギアレシオが確保され、シフトチェンジのストレスが軽減、構造がシンプルな分余計な心配もしなくて済む。


下調べ段階ではよく、「ワンバイ化は街乗り程度の用途ならアリだけど、本格的に上り下りのあるツーリングやロングライドなら結局しっかり段数があった方がよいのだ」みたいな考えを散見したが。

それも自分のような使い方にとっては杞憂だったように思う。

自分がどういう道をどんな風に走っていて、その上で何を求めているのか、という事が明確になっていて、それが合致するならネットの意見なんざ鵜呑みにしててもアテにならんな、と改めて感じる。


ワンバイ化、取り立てて絶賛するわけではないが、惹かれる部分があるなら試してみる価値は十分あるだろう。

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